VはVoyageのV ーパリ、グランパレのルイ・ヴィトン展ー

1月のパリ、毎年この時期に開催されるインテリアやファッション・アクセサリーの展示会に合わせて足を運びますが、今年は様子がちょっと違いました。昨年末に起きたテロ事件を受けて観光客が激減、常日頃は遠目でも行列が目立つオルセーにも待つことなくすんなり入れるほど。おかげで体力温存でき、仕事の合間に積極的に展覧会巡り。滞在最終日には話題になっていたルイ・ヴィトン展を見てきました。

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「Volez, Voguez, Voyagez」と題されたこの展覧会、荷造り用木箱職人であった初代ルイから現在に至るまで、高級ブランドの代名詞とも言えるルイ・ヴィトンの繁栄の歴史を伝える大回顧展。メーカーが企画する展覧会なんて、アピール目的でただ派手で中身の薄いお手軽な展示かと思いきや、その実際は、代表的なトランク、バッグを縦糸、19世紀後半から20世紀前半の激動の時代背景を横糸に、重厚かつ深みのある色彩を放つ一枚の大きなタペストリーを前にしたような、実に見応えのある展覧会だったことは嬉しい驚きでした。

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1924-25年、ヴィトン社は、自動車メーカー、シトロエンの要請で、アルジェリア、マリ、コンゴなど遥か異国、未開の土地への探検隊のために、過酷な天候、地理に合わせて、旅行鞄、日用品を収納する道具ケースを特別に製作したそうです。砂漠の上に配されたトランク、スーツケース、ハンドバックの数々。古いものから最新のデザインのものまで、色と形をバランスよく展示しています。まるで劇場、舞台の大道具、小道具のような見せ方。それもそのはず、アートディレクターはあのロバート・カーセン、有名なオペラの大舞台を幾つも手がけたカナダ出身の有名な舞台演出家による、実にアート性に富んだ素晴らしいものでした。

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デザイン性だけでなく、その機能的な作りで、19世紀後半のトレンドセッターウージェニー皇后をはじめ、世界のセレブレティに愛されたヴィトンの衣装用スーツケース。中に収めるモノに応じてサイズや引き出しの数まで綿密な計算がなされていることが分かります。キャスターなどという野暮な部品はありません。この時代、持ち主自身がスーツケースを持ち運ぶことなどなかったのですから。

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20世紀初頭に登場した「スティーマーバッグ」。海の旅、クルーズと深い関わりがあるスタイリッシュなこのサブ・バッグは、長くこの種のバッグの基本となりました。デッキの上で日光浴を楽しんだあとのサマードレスなど着用済み衣類を入れておくのに用いられたそうです。

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船だけではなく、車での旅行には車のスペースに応じた小型のトランクやバッグが制作されました。車上にどのように積み上げられたかがわかる写真も一緒に展示されています。鞄のみならず当時の車にもご注目ください。ヨーロッパの夏、こんな車で田舎道を走ればそれだけで気分が高揚してくる、そんな楽しい情景が自然と浮かびます。

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車の旅行に欠かせないピクニックトランクやクーラーボックス。中にしまわれているお皿やカトラリーも一緒に見ることができ、写真とともにぐっと臨場感を盛り上げます。収納のために作られた箱が時代のスタイルを詰め込んだ歴史証人であることを示す興味深いコーナーです。

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そしてこの時代、旅は空にも向かって行きます。このスペースの額は飛行機のボディを思わせるメタルフレーム。飛行士や乗客と一緒に空を飛ぶために軽量性が求められるトランク、バッグは、女性用のバッグのサイズに近づいて行きました。
当時の流行のファッションで着飾った女性が、バッグやスーツケースとともに機体の前でパチリ。ごく限られた特権階級のみに許された空の旅を演出するヴィトンのバッグたちはこうしてブランド街道を驀進していったのです。まさに青空に向けて飛び立つ飛行機のように。

VはvoyageのV。陸上のみならず、空へ、海へと羽ばたく時代に生まれたスーツケース、旅行鞄の数々の名品たちと出逢う心が躍る時間旅行のような展覧会。それはブランドに関心がなくても、またはヴィトン愛好者でなくとも、vogue (時代の波、流行)がどのように生まれ、また海の泡のように消え去って行くのかを体験することもできる楽しい小旅行でした。

開催期間は今月21日まで。火曜日を除く毎日朝10:00から夜20:00(水・金・土は22:00)まで。入場料は無料、グラン・パレ、ジャン・ペラン広場より入場。この時期にパリにいかれる方は是非足を運んでみてください。

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