家族の肖像 ー壁のアレンジメント実例その1ー

この3月、アンティーク家具輸入業をしていた頃から親子二代でおつきあいいただいているお客様から、ずっと以前に私から購入されたロココスタイルのアンティークフレームを使って、ご家族のお写真をダイニングの壁に飾りたいというご相談を受けました。ちなみにそのご家業は、お砂糖をはじめ食品の原材料を扱う商社で、天保10年(1839年)にご創業。12年前に一度、曾孫にあたるお客様の横浜のご自宅に、初代当主(曾祖父様)のセピア色のお写真をオーバルの形のアンティークフレームに入れてお納めしました。インテリアのアドバイスをさせていただく中、ダイニングから二階につながる階段周りのギャラリースペースに、その他のご家族の写真ととりまとめて飾らせていただいたことを懐かしく思い出します。

 

 

それがこちらのお写真(中央)。私が拝見するのは12年前の当時からこれで2回目ですが、その人物像はよく記憶に残っています。現在のご一家の繁栄の祖を築いたという方だけあって、褪せつつある紙の色にまるで反比例するかのような存在感。年月とともにいぶし銀のようなオーラを放つこのお写真にふさわしいフレームとは?

 

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そして今回のご依頼主はこちらの方。横浜のお客様のお母様です。初代当主のお孫さんにお輿入れされて半世紀以上の歳月が過ぎ、2年前にはお子さん、お孫さん、曾孫さん、そのご家族数十人が一堂に会して、傘寿のお祝いをされたときのお写真です。私が前回お逢いしてからすでに10年余が過ぎました。ご覧いただくと一目瞭然ですが、その美貌は全くお変わりありません。この貴重な一枚には、フランス製のエイジング加工されたフレームを。フランス語筆記体の文字が背景となるガラスに描かれたとても珍しい作りです。オフホワイトの色が内から滲む女性らしさを引き立てます。

 

 

他界されたご主人様の懐かしいお写真も複数枚お預かりしました。写真館の凝ったセットの中にひさしのあるお帽子とセーラー服姿でちょこんと立つ幼年時代、ご自宅の庭でのいさぎよい丸刈りと質素な国民服姿の少年時代、そしてダンディーなダブルのスーツ姿で船遊びに興じる青年時代と、その時々のお写真が撮られた場所、服装から、当時の世情が偲ばれる興味深いものばかりです。

 


 

ご依頼主が、ご結婚前上京されて二重橋の前でお父様と撮られたお写真。この当時最も人気のあった東京観光スポットの一つ、皇居での記念写真は、昭和の雰囲気がよく出ていて、まるで小津安二郎監督の映画のワンシーンを見るよう。この時代の若い女性に、果たしてお父上とツーショットを撮る機会は一体どれほどあったことでしょうか。それを思うとこれも貴重な一枚。お写真が完全にセピア色に変色しているので、イマドキの単純な色のフレームでは合いません。この一枚には、紙の色に最も近いヴィンテージゴールドで、やはりアンティーク加工されているフレームを選びました。

 


 

時系列にお写真を並べていくと、当然のことではありますが、現代に近づくにつれその枚数も増えていきます。ご結婚写真からお一人目、おニ人目のお子様のご誕生、三人目のお子様の七五三のお祝いへと。写真の色もこのあたりから白黒からカラーに変わります。時代だけでなく、お写真の内容や写っている方の服の色などもフレーム選びのポイントとなります。同じ場所、同じ日に撮られたお写真が複数枚あるときは、映り具合の善し悪しで選ばせていただきました。こうして百枚近いお写真の中から、「トーナメント」に勝ち残り(笑)、見事フレームの中に収まったものだけを集めて、今度は壁の上での最もバランスの良い配置を決めていきます。最初はごく気軽に家族写真を集めて飾ることをイメージされていたご依頼主は、よもや完成までに数ヶ月もかかるとはまったくもってして想像していらっしゃらなかったことでしょう。

 

お気に入りの帽子を被った男の子

 

心に残る一枚の1つ、「ひさし帽とセーラー服の男の子」は濃い茶錆色のメタルフレームに収まりました。概してメタルの質感はヴィンテージ写真との相性が良いものですが、この組み合わせはまるであつらえたかのようにしっくり馴染み、制作者としても嬉しい驚きでした。

お写真一枚一枚の色やその背景にあるエピソードを考慮して、その2次元に封じ込められたストーリーを最も引き立てるフレームをマッチング。ご依頼主から伺ったご家族のエピソードなどを頭に、オリジナルのお写真のサイズや色を、フレームに合わせて変えることもあります。地道ながらも楽しい作業に時を忘れるほどでした。

→ 次回は壁周りのアレンジについて。

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