家族の肖像 ー壁のアレンジメント実例その3ーl’enfant cadet 末っ子物語

l’enfant cadet ー末っ子は、甘やかされて育つとよく言われます。姉や兄の失敗を見て育つので聡くなり、子育てに慣れてきた親は躾に緩くなり、家の中では怖いもの知らず。このおかっぱ頭の少女も末っ子です。

 


はじめにお預かりしたお写真の中にこのおかっぱの少女は入っていませんでした。古いアルバムは年の離れた姉や兄の子供時代の写真でしめられていて、彼女が生まれるのはまだ少し後。七五三などの記念写真は上の子供のものほどきちんと残されています。家族みんなから可愛がられて育つ末っ子ですが、大家族の集合写真の中でスポットライトを浴びることは、実生活ほどにはないのかもしれません。それを考慮して4人のお子様の中で、唯一末娘様お一人だけのこの写真を壁の左上に飾らせていただきました。この壁を見る方が「これは誰?」と少女を見つけてくれるように。

 

 



壁に飾る写真の中には、ご家族の歴史の節目といえる、お子様がた4人のご結婚写真も入れることになりました。ウェディングドレスを着たおかっぱ頭の少女のお写真はどこか別のアルバムにあったらしく、最初の訪問の際お預かりしたのは、結婚式の直前に撮られたというお母様とのツーショットでした。背の高さを超えるほどもあるウェディングケーキに入刀するご長女、クラシックなお振り袖で婚約式を迎えられた次女さまと比べると、年の離れた末娘さまのご結婚は、堅苦しさのない、家族同士のものというよりも、ご本人やお友達主体の今風のお式であったのでしょう。

 



そのお式のお写真がこちら。このお写真は3回目の訪問の際にお預かりしました。式をあげたすぐ後の新郎新婦をお友達が撮られたそうですが、自然な笑みがこぼれる一瞬をとらえた素敵な一枚です。お嫁には当分行かないだろうと末娘さまと都内の新居にお引越されたばかりのお母様は、突然降ってわいたようなこのご結婚のお話に嬉しい気持ちの反面、困惑もされたことでしょう。お寂しさを払拭するように、「でもこのお婿さんが私は大好きなの」と、新しく増えた家族の大きな体躯とおおらかさを楽しそうに語られるのがとても印象的でした。

 



壁の上では、お母様のお写真の右下、大きいお姉様の結婚式のお写真のすぐ下に置きました。フレームは、おかっぱ時代のお写真を入れたものと同じ、ブルーグレーで毛糸を編んだような模様のあるロマンチックなフレームを使いました。この少女は誰?と思って下を見ると、そこには美しく成人してお嫁入りをする女性がいたと、フレームがきっとヒントになってくれるはずです。

 



そして、こちらはもう一つのご家族集合写真。ご両親と4人兄弟が勢揃いしたとても貴重な一枚。その頃写真部に入っていた高校生のご長女が、干支のウサギの枠の中に家族を納め年賀状に仕立てられたという力作です。最初にお預かりしたものの、サイズやデザインが特別なため、なかなか適当なフレームが見つからず、壁に仲間入りしたのは一番最後になってしまいました。

 



壁の上では、左端上に。センターにあるご家族写真と同様A4サイズに引き延ばしています。ここでもお母様が真ん中ですが、お姉さんとお兄さんの背の高さにはまだ追いつけない末っ子が今度はお母様の前を陣取っています。

末っ子が両親と過ごす時間は、先にうまれた子供とはまったく違う時間軸の中にあります。だからこそ家族の時間が愛おしく、思い出が懐かしい。このご家族写真のプロジェクトは、起案者であるお母様の想いとは別に、末娘さまのご期待も大きかったことを、後にご長女から伺いました。特に早世されたお父上と過ごした時間がご兄弟の中で一番短いことから、ご自身がご両親と写るお写真に寄せる思いはお姉様がたと比べるとはるかに強い、というお話も。

 



大きいお姉様のご結婚のとき、ご両親の横に立つ末娘さま。より写真が綺麗にみえるからと、カラー写真でも時には白黒に変えていた私に、「ピンクのドレスを着てたんです。これは白黒にしないほうがいいわね。」とお母様。このお写真は壁の上にこそのりませんでしたが、可愛らしい小さな白いフレームに入ってダイニングキャビネットの中に。その他にもすぐ上のお姉様と公園で遊ぶ写真や、ソファで寝そべるスナップと一緒に飾られています。
「お嫁入りのときに持たせようと思って末娘の写真は別にたくさん集めておいた」というお母様。自分が少女であった時代を、今度は自分の娘にも見てもらいたいという末娘さま。
今回追加されたフレームの中に入ったのは、一枚の紙ではなく、お二人それぞれの秘めた想いであったのかもしれません。

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