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フランス家具の歴史ー19世紀の変わった椅子たち

つい数日前、東京目黒区のアンティークショップ、ジェオグラフィカで、レクチャーをしてまいりました。プティ・セナクル(旧アンティークエデュケーション)が主催するこのカルチャーサロンで、私は「フランス家具の歴史」、そして「フランスの布」などを担当しています。今回のテーマは、先月の「フランスの家具ー18世紀」に続いて「フランスの家具ー19世紀とアールヌーボー」。わずか一時間半で100年と少しにまたがるフランス家具のお話をします。その超特急の講義の中で、場が盛り上がったのがこちらの椅子。19世紀後半、ナポレオンIII世がフランスの君主となった時代、折しも、世界万博がロンドン、パリで交互に開催され、新しい家具や装飾美術品が次々と産み出され、世に紹介された時代でもありました。

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この一風変わった椅子、その名も「confident」ーコンフィドンー、「信頼できるもの」または「腹心の友」とも訳されます。2つの椅子が真ん中でつながっており、S字の形をしているのが特徴。二人で腰掛けると身体は反対の方向に向くのですが、耳元でひそやかに内緒話をするのにちょうど良い形をしているのがお分かりでしょうか。

08-Indiscret

こちらはその「confident」に、もう一人加わり、3人掛け。名前は「indiscret」ーアンディスクレー、「軽率」という意味があります。二人だけの内緒話も、もう一人が加わることで噂があっという間に広がってしまうことの暗示でしょうか。

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こちらは「Salon de la princesse Mathilde」と題された19世紀絵画(1859. by Charles Giraud)ですが、高い天井とシャンデリア、部屋の中央に置かれた暖炉、重厚なカーテンや様々な様式を代表する椅子たちなど19世紀後半の特権階級の室内装飾が細部にわたってよく描かれています。今回は、右端の男女に注目してみましょう。

confident

その他大勢から少し離れて二人だけで話し込む男女、この二人が腰かけているのがまさに「confident」。他人には聞かれたくない話をするのでも、わざと反対方向に座って行うのが、紳士淑女のたしなみでもあったのか、実に興味深いですね。

08-Confident-beton-by-Ducancelle

この「confident」という椅子の形は、よほどフランス人の日常、暮らしぶり、テイストにはまったようで、現代においても数々の家具デザイナーにより復刻されています。こちらは、サブマリンや近未来的なデザインで知られる建築家、デザイナー、Jean-Michel Ducancelle氏(1960-)による「confident」。アールデコのようにも見えますが、椅子の張り布の色の組み合わせが優しいモダンデザイン。

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こちらの「confident」は、現在パリのホテルやレストランの内装で活躍する建築家、室内装飾家、Jacques Garcia氏(1947-)によるもの。一見19世紀そのものにも見えますが、肘掛を無くしたり、キュピドン(ボタン留め)を背もたれ側に止めシンプルにしたりしたところは現代風アレンジ。

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こちらの「condident」はさらに無駄を削ぎ落としてクッションなし。板のように見えますが、色ガラスが使われています。イタリア人デザイナーLuca Nichetto氏によるものですが、ガラス工芸の伝統を誇るムラーノ島(イタリア、ヴェニスの近く)生まれの人だけあって大胆な応用。これが19世紀フランスに登場した「confident」であると理解できるのは、フランス家具の歴史を勉強している私たちだけ!

参考文献:「Le Mobilier Français Napoléon III Années 1880」(published by MASSIN)
画像出典:「Terre Meuble -Le blog du meuble de qualité et de la décoration-

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